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非結核性抗酸菌症

 

非結核性抗酸菌症はどんな病気?

抗酸菌とは一般細菌と異なり、染色されにくいが、一旦染色されると酸性アルコールによる脱色素剤に抵抗性を示す、酸に抵抗する菌のことをさします。抗酸菌属には、結核菌、らい菌や非結核性抗酸菌などがあります。非結核性抗酸菌によって起こった感染症が非結核性抗酸菌症です。
非結核性抗酸菌は、現在100菌種以上が発見されていますが、人に病気を起こすのは15菌種程度です。そのうちアビウム、イントラセルラーレの2菌種 が全体の7~8割を占めています。この2菌種を合わせてMAC(マック)と呼びます。次いで、カンサシーという菌が2割弱を占め、その他の珍しい菌種が1割弱で認められます。
結核菌は人に寄生する細菌(結核菌は体外では生存できない)で、人から人に感染しますが、非結核性抗酸菌はもともと塵埃、土壌、水など人間の身近な環境に生息しています。こうした環境中の粉塵や、水しぶきなどと一緒に菌を吸い込むことにより感染します。誰にでも感染の可能性はありますが、人から人に感染することはありませんので結核のように隔離入院をすることはありません。また、非結核性抗酸菌症が進行して結核になることもありません。

 

非結核性抗酸菌症の症状

最初は自覚症状のないことが多いのですが、進行すると咳、痰、血痰、微熱などを認めるようになります(非結核性抗酸菌症だけにみられる特有の症状はありません)。他に、倦怠感、寝汗、体重減少、息切れ、胸痛などが見られることもあります。重症化し呼吸不全に至る場合もありますが、通常、症状の進行は緩やかでゆっくりしており、徐々に進行していきます。なかには無治療でもほとんど進行しないものもあります。

 

非結核性抗酸菌症の原因

体内に菌が入ってうつること(感染)と、実際に病気になる(発病)は別に考える必要があります。結核の場合、実際に発病するのは感染を受けた人のうちの1割程度と言われております。非結核性抗酸菌は結核菌よりも病原性が弱いため、ほとんどの人はたとえ感染しても発病しません。しかし、肺にもともと病気を持っている人(肺結核後遺症、じん肺、肺気腫、間質性肺炎、気管支拡張症、肺嚢胞、サルコイドーシスなど)や、体の抵抗力の弱い人(エイズ患者、白血病患者、リウマチや臓器移植などで免疫抑制剤使用中のひと、手術後などで体力が落ちた人など)は、発病の危険性が高いと考えられます。また最近では、原因は分かっていませんが、健康な中高年、特に女性に感染者が増えてきております。神経質な人やストレスを受けやすい人に多いようです。

 

非結核性抗酸菌症の検査と診断

レントゲンやCTなどの画像検査と、喀痰検査が必要になります。画像検査で非結核性抗酸菌症を疑う所見を認め、かつ喀痰から菌が検出される(喀痰培養検査、遺伝子検査などをおこないます)ことにより診断に至ります。菌の発育は遅いので培養検査の結果が出るのに6-8週間要することもあります。

非結核性抗酸菌はもともと自然界に存在するので、痰の中に偶然入ってしまうこともあり、診断には複数回の菌検出(喀痰検査など)が必要になります。
結核、肺の真菌症、肺癌、肺炎などとの鑑別が重要であり、喀痰が出ない場合、菌を証明するために気管支鏡検査を行ない詳しく調べることもあります。

 

非結核性抗酸菌症の治療方法

治療には複数の抗結核薬を用いた化学療法が行われますが、確実に治癒できる治療法はいまだに確立されておりません。
我が国に多いMAC症の場合、クラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)といった薬剤を併用するのが一般的であります。場合によってはストレプトマイシン(SM)を筋肉注射することもあります。病原性は結核菌より弱い菌ですが、治療効果が得られるのは約半数とも言われております。また治療期間も1~2年程度要します。人によっては菌が陰性化せずに、長期間にわたり内服し続けることもあります。若い患者さんで初期に発見されれば、外科的手術で病巣部分を切除することが最も効果的である場合もあります。しかし、複数個所に病巣があったり、病巣が広かったりする場合や、高齢の患者さんには手術はあまり勧められません。副作用には、アレルギー反応(発疹、発熱など)、肝臓障害、腎臓障害、血小板減少、白血球減少などがあり、定期的な受診と採血検査が必要になります。その他に視神経障害、平衡感覚異常や聴力低下といった聴神経障害をきたすこともあります。 

年単位で少しずつ進行してゆく例が多いのですが、一般的に進行は緩徐で、日常生活に支障がない例も多く、何年もレントゲン所見が変化しない例もあります。治療開始時期や治療期間も定まった基準もないことや、治療効果も確実ではなく、副作用の出る可能性もありますので、病状によっては治療せずに経過観察する場合もあります。自覚症状が強いか、進行が速い例で、治療を開始することになります。

カンサシー症の場合、リファンピシン(RFP)、イソニアジド(INH)、エタンブトール(EB)といった薬剤を併用いたします。カンサシーは比較的治療効果が期待できるために、状況が許せば加療を試みます。

 

非結核性抗酸菌症の日常生活における注意点

非結核性抗酸菌症は、日和見(ひよりみ)感染症の一つとも考えられております。日和見感染症とは、健康な人では感染症を起こさないような弱い病原体が原因で発症する感染症です。身体の抵抗力や免疫力が低下し、病原菌の増殖を抑えられなくなると病気が進行してしまいます。したがって身体の抵抗力や免疫力を増強するために、規則正しい生活とストレスからの解放、心身のリフレッシュが重要になってきます。

  1. 早寝・早起きを心がけ、十分な睡眠時間を確保するように心がける。
  2. 過労を避け、疲れた場合には十分な安静をとるように心がける。
  3. 過食や偏食は避け、栄養バランスのとれた食事を心がける。
  4. ストレスをため込まないように、適度な運動を心がける。

非結核性抗酸菌はヒトからヒトへの感染はないので、家族への伝染の心配はなく、家族や周囲のヒトへの特別な配慮は必要ありませんが、自宅内で菌のすみつきやすい場所(風呂場、シャワーヘッドなど)を定期的に掃除し、清潔に保つように心がけてください。
自覚症状がなくても定期的な通院が必要です。経過観察中でも3ヶ月から半年に一度は受診するようにしましょう。治療が開始されたら、治療を成功させるために、薬を指示通りに確実に内服することが重要です。