咳喘息

咳喘息について
最近非常に増えている病気です。
気管支喘息のようなヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸(喘鳴 ぜんめい)や呼吸困難は認めませんが、咳だけが長く続く病気です。咳喘息は気管支喘息とは異なりますが、気管支喘息の前段階と考えられています。風邪が引き金となって発症することが多く、風邪は治ってそうなのに咳だけが続く場合、この病気を考える必要があります。
こんな症状はありませんか?
気管支喘息のような喘鳴や呼吸困難がなく、乾いた咳だけが続き、発熱や痰などは一般的には認めません。風邪の後に続いて起こることが多く、風邪が長引いていると思われる方も多いです。
他に下記のような場合も咳喘息の症状が疑われます。
- 風邪をひきやすく、風邪薬や咳止めがなかなか効かない
- 「のどがイガイガする」「のどに痰が絡む」など、のどに違和感があり 咳がでる
- 布団に入った直後や夜間・明け方に咳き込む(夜間にひどく、不眠の原因にもなる)
- 冷気を吸った時、電車に乗った時などに咳き込みやすい
- 会話時、長電話時、運動時、笑った際に咳がでる
- タバコの煙、香水の匂い、ほこりなどで咳がでる
- 季節の変わり目、梅雨時、台風シーズンに咳がでる
咳喘息の原因と検査方法
原因
原因は今のところよくわかっていませんが、気管支喘息と同様に気道粘膜に炎症が起こっているために症状が出現します。気道粘膜のただれを引き起こすのは、ダニやペットなどのアレルギー物質、風邪などの感染症、疲労やストレス、タバコ、黄砂、工場などから発生する大気汚染物質、寒暖差や気圧の変化、遺伝などのほか運動や飲酒などが原因となることもあります。これまで喘息の症状が出ていない人でも、こうした要素が絡み合って発症に至ります。成人の場合、約6割の方が何らかのアレルギーを持っておられ、特にダニやペットのアレルギーが原因となりやすいです。また喘息患者さんの1割の方は、痛み止めの成分で喘息発作を引き起こすことがあり、解熱鎮痛剤の使用には注意が必要となる方がおられます。他に高血圧や緑内障の薬で喘息が悪化してしまうものもあります。
検査・診断
問診で病歴を詳しくたずねたうえで総合的に診断していきます。
長びく咳を認め、ちょっとした刺激(冷気、煙、会話、運動、匂いなど)で咳が誘発される場合などに疑います。(長引く咳は、厳密には8週間以上持続する場合をさしますが、8週間も無治療で経過を見ることは非現実的でありますので、3週間以上持続する際には咳喘息を強く疑います)
次に、咳喘息では異常は認めませんが、結核や肺癌などを除外するためのレントゲン撮影や、気管支喘息やCOPD(タバコ病)といった疾患を除外するための肺機能検査を行います。さらに、咳喘息は気管支喘息と同様に好酸球性気道炎症を認めるために、呼気一酸化窒素検査(FeNO)などが補助診断のために用いられます。そして気管支拡張薬を用いた治療がよく効いた場合に咳喘息と診断します。
咳喘息の治療方法
風邪薬、抗生物質や通常の咳止めでは効果を認めません。治療は気管支喘息と同じで、気道の炎症を抑える吸入ステロイドが基本となります。夜間症状が強いなど、生活に支障が出る場合には、長時間作用型の気管支拡張薬を併用します。気管支拡張薬は一時的に症状を減らすのには効果的でありますが根本治療にはならず、咳をなくしていくには吸入ステロイド薬が必要になります。ステロイドや気管支拡張薬には内服薬と吸入薬がありますが、主には副作用の少ない吸入薬を用います。
またアレルギーが原因であればダニやホコリ、花粉など増悪因子となるアレルギー物質を避ける、喫煙者であれば禁煙する、疲労やストレスを解消するなど、原因に応じて日常生活の環境を整えるのも大切です。
放置や自己判断での治療中断は危険です
単なる風邪の咳とは異なり、喘息は咳が止まっても気道粘膜のただれは治っていません。放置や治療中断により悪化し、少しの刺激で咳が出やすくなったり、前回発症時に用いた同じ治療薬を使っても治まらなかったり、難治性の咳になったりすることも起こってきます。
治療をせずに放っておくと、約3割の人が気管支喘息に移行してしまう危険性があるので、咳嗽が続く場合には医療機関を受診するようにしましょう。また気道の炎症が治まるには数か月かかります。症状が改善したからといって自己判断で治療を中止せずに、薬剤の中止時期は必ずかかりつけ医に相談するようにしてください。
咳喘息の日常生活における注意点

咳喘息の予防のためには、気道にさらなる炎症を起こさせないようにすることが大切です。インフルエンザをはじめとするウイルス感染や風邪を予防するために、風邪の流行時にはマスクの着用や手洗い・うがいを心がけましょう。マスクの着用は冷たい空気から気道を守るためにも有用です。
たばこ煙によっても気道に炎症が増強されるので、禁煙も重要となります。
ダニやハウスダストも関与している場合があるので、こまめな掃除と、ほこりっぽい場所を避けるようにしてください。
疲労・ストレスをため込まず、バランスのとれた食事や規則正しい生活を心がけてください。