睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は、病名の通り、睡眠中に呼吸が止まった状態(無呼吸)が繰り返される病気です。睡眠中に10秒以上の無呼吸や呼吸の低下が、一晩の睡眠中(7時間)に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上認められる状態を指します。
睡眠中の無呼吸は、毎日の生活にさまざまな影響を及ぼしてきます。
昼間にひどい眠気に襲われ、それが原因で交通事故などにつながるケースが後を絶たないところもこの病気の怖いところです。
寝ている間のことなので、なかなか自分が無呼吸であることに気付かず、検査や治療を受けることができていない潜伏患者が大勢いるのではないかと考えられています。我が国では約300万人が睡眠時無呼吸症候群の可能性があるといわれていますが、実際に治療をしているのはごくわずかです。
この病気は肥満傾向の40~60歳の男性に多く、女性では閉経後に増加していきます。

こんな症状はありませんか?

睡眠中に呼吸停止が繰り返され、呼吸停止時には身体の中の酸素量が減少します。低酸素よるストレスのために交感神経緊張状態が長く続くと、高血圧や心疾患を合併する危険性が高くなります。本人は寝ているので気付いてはいませんが、このような睡眠状態では脳も身体も休めておらず、十分な休息がとれていない状態であるといえます。その結果、日中に強い眠気や集中力低下などがあらわれ、さまざまな活動に悪影響がでてきます。

主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 寝ている間(いびきをかく / 呼吸がとまる / 寝汗をかく / 睡眠途中で目が覚める / 何度もトイレに起きる)
  • 起床時(口が渇いている / すっきり起きられない / 頭が痛い)
  • 起きている間(強い眠気がある / 集中力が続かない / 疲労感、だるさがある)

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると危険です

十分な休息が取れていないため、業務上のミスや交通事故などのリスクがあるほか、放置することで高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、不整脈など、命に関わる可能性のある病気へとつながっていく可能性もあります。眠っている間に呼吸が止まることで、繰り返し覚醒反応が起こり、これにより交感神経が活性化されて血圧上昇や不整脈を引き起こしたり、無呼吸による一過性の低酸素状態により酸化ストレスが亢進され、血管内皮障害や動脈硬化を引き起こしたりします。このように体にさまざまな負担がかかるため、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、そうでない方に比べて死亡率も高くなるという報告もあります。

睡眠時無呼吸症候群の原因

のどの辺りの空気の通り道が閉塞することが原因です。
この要因には以下のようなものが挙げられます。

  • 肥満による首周りの脂肪増加
  • 舌のつけ根の気道への落ち込み(舌根沈下)
  • 扁桃腺が大きい
  • 大きな舌(巨舌症)
  • 小顎症(顎が小さい)
  • 鼻中隔弯曲

睡眠時無呼吸症候群の原因として肥満が多いとされていましたが、近年、肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群になることがわかってきています。日本人特有の顔や顎の形が原因ではないかという見方もあります。

睡眠時無呼吸症候群の検査と診断

昼間の自覚症状やいびきの有無などが大切になります。家族の人から聞いた睡眠中の様子なども、可能であれば伝えてください。問診で睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、より具体的な検査となります。まずは自宅でいつも通り寝ながらできる簡易検査を行います。簡易検査は、体内の酸素状態や、いびきなどの呼吸状態を、手指や鼻の下につけたセンサーで感知し、それを腕時計のような装置が記録していく検査です。
痛みや苦痛はほとんどありません。さらに自宅でできる検査ですので、仕事や日常生活に影響もなく検査を受けることが可能です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)診断の流れ

参考:令和2年度 官報・厚生労働省通知

簡易検査(腕部に装着する場合)

掲載元:フクダ電子株式会社公式HP

より詳しい検査と診断

簡易検査の結果より詳しく調べる必要があると判断された場合、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれる検査を専門の医療機関に入院して行います。その結果、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)が1時間当たり5回以上で、前述の症状がある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。AHIが5~15回は軽症、15~30回は中等症、30回以上は重症とされます。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive airway Pressure:CPAP)

経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive airway Pressure:CPAP)という対症療法です。欧米や日本で一番普及している治療方法で、睡眠中の無呼吸状態を防ぐため、気道に空気を送り続け、気道を確保しておくというものです。CPAP装置から鼻に装着したマスクを介して気道へと空気が送り込まれる仕組みになっています。中等症以上(AHIが20回以上)の睡眠時無呼吸症候群患者さんが健康保険の適用となります。

マウスピース(必要時には作成可能な歯科を紹介させていただいております)

マウスピースでの対処療法です。軽症の睡眠時無呼吸症候群患者さんは、歯科装具で治療します。下あごを上あごよりも前に出やすいように固定することで上気道を広げ、いびきや無呼吸の状態を防ぎます。

外科的手術(必要時には手術可能な病院を紹介させていただいております)

科的手術となります。睡眠時無呼吸症候群の原因がアデノイドや扁桃肥大の場合、摘出手術が有効だと言われていますが、成人の場合は、こうした原因が明らかでないことが多く、手術療法は慎重な判断が必要となります。

眠時無呼吸症候群の日常生活における注意点

治療を効果的に行うために、生活習慣の改善も必要になります。肥満気味の方は体重を減らしたり、鼻呼吸がしにくい場合は鼻症状の治療にも取り組んだり、晩酌をされる方は量を減らしたりすることで、無呼吸が軽減する場合があります。

また仰向けの睡眠は舌根沈下を招くために無呼吸が悪化することがあります。横向きで寝るなどの工夫が無呼吸軽減に有効な場合があります。

検査にかかる費用

睡眠時無呼吸症候群の検査と治療には、健康保険が適用されます。

簡易検査 2,700円(3割負担の方)

※初診料・再診料の他、別の検査を併せて行う場合などは状況に応じて別途費用がかかります。(詳しくはお問合せ下さい。)

よくあるご質問

Q
家族から「いびきがうるさい」「寝ている時に息が止まっている」と指摘されます。これは睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
A

はい、その可能性が高いです。大きないびきや、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる状態は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的な症状です。寝ている間のことなのでご本人は気づきにくいため、ご家族に指摘された場合は一度当院までご相談下さい。

Q
日中に強い眠気を感じることがよくあります。ただの疲れでしょうか?放置しても大丈夫ですか?
A

強い眠気は、睡眠中に無呼吸が繰り返されることで脳や体が十分に休めていないサインかもしれません。睡眠時無呼吸症候群であった場合、放置すると、高血圧や糖尿病、不整脈、心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる病気につながる危険性があります。また、眠気が原因で重大な交通事故などを引き起こすリスクもあるため、決して放置せず、まずは当院にて簡易検査を受けてみてください。

Q
睡眠時無呼吸症候群は、太っている人だけの病気ではないのですか?
A

肥満が主な原因の一つであることは事実ですが、痩せている方でも発症することがあります。日本人の場合は、顎が小さい、舌が大きいといった骨格的な特徴が原因で気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になる方も少なくありません。

Q
検査は大変ですか?仕事などを休む必要がありますか?
A

いいえ、まずはご自宅で普段通りに寝ている時に行う簡単な検査(簡易検査)から始めます。腕時計のような装置と、指や鼻の下につける小さなセンサーを使って睡眠中の呼吸状態を調べるもので、痛みもなく、日常生活に影響はありません。この検査で異常が見られた場合に、必要に応じて専門医療機関での入院検査を検討します。

Q
どのような治療法がありますか?また、自分でできる対策はありますか?
A

最も一般的な治療法は、CPAP(シーパップ)療法です。これは、寝ている間に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぐものです。軽症の場合は、下あごを前に出す特殊なマウスピースを作成することもあります。また、ご自身でできる対策として、肥満気味の方は減量する、お酒の量を控える、横向きに寝るように工夫するといった生活習慣の改善も、症状の軽減に有効です。

Q
睡眠時無呼吸症候群で出てくる自覚症状は何がありますか?
A

「いびき」や、「寝ている時の呼吸停止」は自分では気づかないことが多いですが、「日中の眠気」、「集中力の低下」、「起床時の口渇」、「夜間の頻尿」などがあげられます。「しっかり寝ているのに疲れが取れない」と感じる方もおられます。

Q
高血圧の治療を行っていますが、なかなか血圧が下がりません。何か原因があるのでしょうか?
A

減塩を中心とした食事療法や、運動療法などが十分でない場合もありますが、睡眠時無呼吸症候群といった他の病気が隠れている可能性もあります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、寝ている時に、呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)を何度も何度も繰り返します。そうすると交感神経が過剰に活性化され、血圧上昇につながっていきます。一般的には、睡眠時無呼吸症候群が原因で血圧上昇をきたしている場合には、降圧薬が効きにくく、無呼吸に対する治療を適切に行うことで血圧が低下してくることがあります。一度当院までご相談ください。

Q
夜間の頻尿は睡眠時無呼吸症候群でも起こると言われました。何故でしょうか?
A

喉が落ち込むことで気道が閉塞して無呼吸になると、呼吸をしようと胸腔内が陰圧になります。胸腔内が陰圧になると、心臓に戻ってくる血液量が増えますので、心臓は負担を軽くしようとして利尿ホルモンを分泌します。これにより尿量が増加するのが第一の原因です。第二の原因としては、睡眠時に無呼吸や低呼吸になると、体は低酸素になっているので脳が覚醒して呼吸を再開するように指示を出します。無呼吸を起こすたびに脳が覚醒するので、深い睡眠が得られなくなります。このように利尿ホルモンが増えることで尿量が増えてしまい、眠りが浅いので尿意を感じやすくなり、夜間頻尿が起こると考えられます。