消化器内科

消化器内科について

消化器内科は、主にお腹の病気、すなわち消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)や肝臓、胆のう、膵臓などの臓器を診療する科です。
胸のつかえ感、胸やけ、吐き気・嘔吐、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満感、黄疸などが続いている場合は、早めに受診しましょう。これらの症状は、時に深刻な健康問題の兆候となることがあります。
胃がん、大腸がん、肝臓がんなどの重要な疾患に関しては、初期段階では症状がほとんど現れません。これらの疾患の早期発見は極めて重要となります。

こんな症状はありませんか?

  • 嘔気・嘔吐
  • 腹痛
  • お腹の張り
  • 便が細い
  • 便の色が黒い
  • 下痢
  • 胸やけ
  • 食欲低下
  • 便に血が混じる
  • 便秘
  • 呑酸(すっぱいものや苦いものが上がってくる)
  • 体重減少

このような症状に心当たりがある方は、消化器の疾患がある可能性があります。
早めの受診をおすすめします。

感染性胃腸炎(ノロウイルス)

「ノロウイルス」が主な原因とみられる感染性胃腸炎は一年を通して発生しますが、特に冬季(11月~3月頃)に流行します。感染を防ぐための対策や、万が一感染してしまった際の対処法をご紹介します。

ノロウイルス厚生労働省パンフレット

症状

ノロウイルスは手指や食品などを介して感染し、潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間といわれています。この間に腸内でウイルスが増殖し、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などが主な症状であります。一般に発熱は軽度であります。
通常、これら症状が1~3日続いたあと軽快していきます。
体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、吐物を誤って気道に詰まらせたりして重症化することもあります。
ノロウイルスには多数の「遺伝子型」が存在するため、同じ人が違う型のノロウイルスに感染することもあります。

治療法

ノロウイルスを予防するワクチンはありません。
また、有効な抗ウイルス薬がないために、治療は下痢に伴う脱水対策が主体となります。整腸剤、吐き気止め、胃薬などを用います。回復を早めるため漢方薬を併用したり、点滴を行ったりする場合もあります。

予防対策

感染経路としては、「ノロウイルスに汚染された食品(カキなどの二枚貝類や生鮮食品)」、「感染者の糞便や嘔吐物」などが考えられており、嘔吐物などの処理や、食品の加熱が大切です。ノロウイルスの失活化には、アルコール消毒はあまり効果がなく、次亜塩素酸ナトリウム(後述)や加熱が有効です。

  • Point.01

    石鹸を用いた十分な手洗い

    石鹸を用いた十分な手洗いは、手指に付着したノロウイルスを減らすためには、最も有効的であります。調理前や食事前、トイレの後、嘔吐物などの処理後などには十分な手洗いを心がけてください。帰宅後やドアノブ、手すりなどに触れた後は、手のひらだけでなく手首まで丁寧に洗いましょう。

    衛生的な手洗い

  • Point.02

    調理器具の洗浄・消毒

    まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。感染者が使用後の食器等は、出来れば使い捨てが理想ですが、不可能な場合、可能であれば次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)に十分浸し消毒します。その後十分に洗浄してください。

  • Point.03

    生鮮食品(野菜、果物など)の洗浄

    食品からの感染予防には洗浄と分別が重要です。葉物野菜は外側から一枚ずつ丁寧に流水で洗い、根菜類は表面の泥をブラシでこすり落とすとより効果的です。調理台では生食用・加熱用の区域を分け、包丁やまな板も用途別に使い分けましょう。

  • Point.04

    貝類などは中心部まで十分に加熱調理

    加熱調理は効果的な殺菌法です。特に牡蠣などの二枚貝は感染源になる事が多く、貝類を調理する際は表面だけでなく、中央部まで確実に火を通すことがポイントとなります。85℃以上で1分以上加熱することで感染力が失われていきます。調理の際は家庭用の食品温度計を活用すれば、視覚的に安全を確認できます。加熱後の食材は汚染されていない食器を使用するようにしましょう。

  • Point.05

    二次感染の予防

    嘔吐物や便を処理するときは、使い捨てのマスクと手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないようにしましょう。 汚物は、ペーパータオル等で静かにふき取りましょう。 その後、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。ノロウイルスは、乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、便、嘔吐物を乾燥させないうちに処理することが重要です。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、何らかの原因で胃液が逆流することで、食道の粘膜に潰瘍やびらんといった炎症が起こる病気です。胃液には胃酸という強い酸が含まれていますが、食道の粘膜は胃酸の強力な消化力を防御する機能を持っていないため、胃酸が食道に逆流してしまうと粘膜に炎症がおきるのです。
食事スタイルの欧米化、ストレスの多い生活環境、肥満、高齢などにより、日本人に逆流性食道炎が増加する傾向がみられます。

症状

逆流性食道炎の主な症状は以下の通りです。

  • 嚥下障害:のどがつまり、食べ物を飲み下すことが難しい。
  • 胸やけ:前胸部を中心とし、のどにかけて熱いものがこみあげてくるような、焼けるような感覚。
  • 呑酸:すっぱい液体や苦いものが口まで上がってくること。

上記のような典型症状を呈さない、一見食道に関係のないような食道外症状を認める場合も多く認められます。乾いた咳が唯一の症状であることもあり、慢性咳嗽の原因になる事もあります。
また以下のような症状がある場合は、不眠や食欲不振の原因にもなり、仕事や日常生活に支障をきたすようになることもあります。

  • のどの違和感・声枯れ:イガイガした感じや痛みを感じることがあります。
  • 咳:乾いた咳や気管支喘息の原因となる事があります。
  • 胸痛:締め付けられるような痛みを感じることがあります。

原因

逆流性食道炎は逆流した胃酸が食道の粘膜を荒らすことにより発症しますが、このように胃酸が逆流してしまう原因は実にさまざまです。
最初に考えられる原因は、胃酸の過剰分泌です。肉や油っこいものなど、脂肪分が多い食事をとる食生活を送っていると、胃酸の分泌量が増え、胃酸が逆流しやすくなります。またタンパク質の多い食事も、消化に時間がかかるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。
また、下部食道括約筋の機能の低下が考えられます。下部食道括約筋とは、胃と食道のつなぎ目にあり、胃から食道への胃酸の逆流を防ぐ働きをする筋肉のことです。ご高齢になるにつれ、この下部食道括約筋の機能が低下する方が増えてきます。
さらに、腹圧の上昇も逆流性食道炎の原因の1つとして考えられます。ベルトや肥満などによる腹部の締め付け、重い物を持つなどして力むこと、背骨の曲り、妊娠などによって胃が圧迫され、胃酸の逆流が起こりやすくなるのです。

検査と診断

  • 問診

    質問票を用いて自覚症状を詳しく訊ねることで診断していきます。

  • 内視鏡検査

    上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)よって、胃酸の逆流による食道粘膜のただれなどの度合いを確認します。
    最近、胃カメラで食道粘膜障害が認められない方も、胸焼けや呑酸などの逆流性食道炎の症状を訴えられる方がおられます。決して珍しいことではないことが分かってきており、非びらん性胃食道逆流症と呼ばれています。

治療法

逆流性食道炎の治療には、薬物療法、生活習慣の改善、手術療法などがありますが、薬物治療と生活習慣の改善で良くなることがほとんどです。

薬物療法

主に4種類の薬が処方されます。

胃酸分泌抑制剤
胃酸の分泌量を減少させる効果があります。H2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬があります。
制酸剤
胃酸を中和して症状を軽減させる効果があります。
消化管運動機能改善剤
食道の運動機能を改善し、胃酸が逆流するのを防ぎます。消化管の運動を活発化させ、食べ物が胃に長時間留まらないようにします。
粘膜保護剤
食道の粘膜を保護する薬です。炎症を起こしてしまった粘膜を修復します。

生活習慣の改善

食生活の見直しが重要です。胃への刺激が少ないものを腹八分目程度に摂取することが大事です。また、肥満に気をつける、重いものを無理に持たないといったことにも気をつけましょう。

手術療法

薬物療法で効果がでない場合などに行いますが、あまり一般的ではありません。逆流性食道炎の手術には、腹腔鏡手術や内視鏡手術などがあります。

日常生活の注意点

前屈みの姿勢、ベルトなどでお腹を締め付ける、排便時のいきみ、重い物を持つなど、腹圧を上げることを避けて下さい。食事では、脂肪やたんぱく質の多い食べ物、チョコレートなどの甘いもの、唐辛子・胡椒などの香辛料、レモンなどの酸味の強い果物、コーヒー・紅茶・緑茶などのカフェイン、アルコール類、タバコなどは胃酸分泌が増えたり、胃内で食物の停滞時間が長くなったりして、逆流を起こしやすくしますので注意しましょう。何より腹八分目程度に摂取することが大切です。さらに食後2~3時間以内に横になるのは避けましょう。また、就寝時は頭を少し高くして寝るようにするのも有効です。

胃・十二指腸潰瘍

本来、胃は食べ物を消化するために、強い酸とペプシンといった消化酵素を含んだ胃液を分泌します。何らかの原因で、この胃液によって胃や十二指腸の粘膜を溶かして深く傷ついてしまう疾患を胃潰瘍、十二指腸潰瘍といいます。

症状

みぞおちあたりの痛み、胸やけ、胃もたれ、嘔気・嘔吐、食欲不振などを認めることがあります。
胃潰瘍の場合は食事中から食後に起こることが多く、十二指腸潰瘍の場合は、空腹時に痛むことが多いです。しかし、自覚症状が全くない方もおられます。 潰瘍が進行することで出血や穿孔をきたすことがあります。出血することで吐血をきたしたり、タール便(コールタール様の真っ黒な便)を認めることがあります。

原因

以前は、粘膜による防御因子の働きと、胃酸による攻撃因子とのバランスが崩れることで発症すると考えられておりました。最近では、ヘリコバクター・ピロリ菌という胃の中に住み着いた細菌が深く関わっていることが明らかとなりました。他には消炎鎮痛薬(解熱・鎮痛薬など)、抗血小板薬、ステロイド薬など薬の内服、ストレス、喫煙、カフェイン、アルコールの飲みすぎなどがあげられます。

検査

胃透視(バリウムによるX線検査)と、内視鏡検査(胃カメラ)があります。 胃がんでも潰瘍ができることがあるため、直接胃の中を観察でき、組織採取も可能な内視鏡で検査をすることが多くなってきてます。
内視鏡検査ではヘリコバクター・ピロリ菌の有無もチェックすることが可能です。

治療法

基本的に胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーといった薬剤により治療します。胃粘膜防御薬を用いる場合もあります。
十二指腸潰瘍もヘリコバクター・ピロリ菌が存在する場合には、ピロリ菌の除菌治療も行います。

日常生活の注意点

胃酸分泌抑制剤といった治療薬の進歩により、手術を要することは非常に少なくなりました。
またヘリコバクター・ピロリ菌に感染している方は、除菌療法が推奨されます。ピロリ菌を除菌することで再発をある程度防止できるようになりましたが、再発される方もおられます。
タバコは潰瘍の治癒を遅らせたり、再発しやすくなるので禁煙をお勧めします。鎮痛剤やステロイド薬の内服が必要な方は、胃酸分泌抑制剤の併用が進められます。またカフェイン、炭酸飲料、アルコール、酸味の強い食品、香辛料など胃酸分泌を促進するような食品は避けるようにしましょう。
調子が良いからと、勝手に治療を止めたりせず、医師とよく相談するようにしてください。

ヘリコバクター・ピロリ感染症

ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)という細菌が胃に感染することにより引き起こされる感染症です。
一般的に細菌は強い酸性の胃酸によって殺菌されますが、ピロリ菌は胃酸を中和させるウレアーゼという酵素を有しているために、胃粘膜で生息することが可能となります。ピロリ菌に感染すると、胃炎や十二指腸炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどの病気を引き起こすリスクがあります。

症状

多くの方は自覚症状はないままに過ごされておりますが、胃の不快感や消化不良といった症状を有される方もおられます。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんといった病気が引き起こされた場合には上腹部痛や食欲不振といった症状が出現することがあります。

原因

ピロリ菌は主に5歳以下の乳幼児期に感染します。ピロリ菌の混入した井戸水などの生活用水を摂取したり、ピロリ菌感染者の唾液を介して(離乳食を咀嚼して乳児に与えるなど)感染すると考えられております。免疫機能が確立していない乳幼児期に感染することが多く、成人ではほとんど感染しないといわれております。

検査

検査の種類は、主に以下の4つがあります。
内視鏡検査時に施行する、迅速ウレアーゼ試験や採血検査にてピロリ菌抗体を測定して診断することが多く、除菌療法後の除菌確認のために尿素呼気試験を行うことが多いです。

抗体検査
血液や尿を用いて、ピロリ菌の抗体を測定してピロリ菌の有無を調べます。
便中抗原検査
便を用いてピロリ菌の有無を調べます。
尿素呼気試験
空腹時に薬を飲み、吐き出した息の中の炭酸ガスを測定することでピロリ菌の持つウレアーゼ活性を調べます。
内視鏡検査
内視鏡で胃粘膜を採取し、特殊な反応液で検査する迅速ウレアーゼ試験、胃粘膜を染色して顕微鏡で調べる組織鏡検査、胃粘膜を培養して調べる培養検査などがあります。

治療法

ピロリ菌のいる患者さんには、1種類の胃酸分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬の計3種類の薬を1日2回、7日間内服する除菌療法があります。
この方法による除菌の成功率は約70~90%です。初めての除菌療法(1次除菌)で除菌成功しなかった場合は、抗菌薬を変更して再度除菌療法(2次除菌)を行います。ほとんどの方は2次除菌までで除菌成功しますが、まれに除菌出来ない方もおられます。一度除菌された方の再感染率は0.2~2%と考えられています。除菌療法により、アレルギー反応、軟便、下痢、味覚異常、肝機能障害といった副作用が現れることがあります。除菌成功後に、胃の機能が正常化していくことで、胃酸分泌が改善され、少数の方ではありますが、逆流性食道炎の症状がみられることがあります。

日常生活の注意点

  • ピロリ菌感染が判明した場合、乳幼児への食べ物の口移しは避けましょう。
  • ピロリ菌の除菌療法中は、アルコール、カフェインや、刺激物・脂っぽい食事は避けるようにしましょう。
  • ピロリ菌の除菌に成功した場合も、胃がんのリスクが残るために、年に1度は内視鏡検査を受けるようにしましょう。

過敏性腸症候群

下痢や便秘といった便通異常や、腹部膨満感や腹痛といった症状が慢性的に続いているのに、大腸カメラなど一般的な検査で原因となる異常が確認できない場合、過敏性腸症候群の可能性があります。原因はさまざまですが、精神的ストレスや自律神経のバランスが崩れていることなどから起こるケースが知られています。

症状

  • 下痢や便秘、または下痢と便秘が交互に現れるといった便通異常
  • 腹痛や腹部不快感
  • 腹部膨満感やガスが頻回に出る
  • お腹がゴロゴロと鳴る
  • 残便感

原因

原因は明らかではありませんが、腸の働きは自律神経によって調整されており、ストレス、不安、恐怖、抑うつなどによりこのバランスが崩れることで、腸の運動が過剰になり下痢を引き起こしたり、逆に動きが鈍くなり便秘を引き起こしたりすることがあります。

検査

採血検査、便潜血検査といった一般検査、腹部CT検査や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い、他の原因疾患がないかを調べます。

治療法

患者さんの症状に応じて、腸の運動をを調整する薬や、便の硬さを調整する薬、また腸内細菌叢を整える薬、下痢止めの薬などを処方します。抗不安薬や漢方薬を用いる場合もあります。

日常生活の注意点

規則正しい生活を送り、十分な睡眠を心がけましょう。また1日3食を、決まった時間にきちんととるように工夫し、野菜などの食物繊維を意識的に摂取することが大切です。炭水化物や脂質の多い食事、香辛料、アルコール、コーヒーなどを避けてください。
無理のない程度で散歩などの運動を行うことも効果的です。過度のストレスや過労を避け、生活習慣の改善していくことが重要になります。

内視鏡検査が必要な場合は、専門医院をご紹介いたします

当院では内視鏡検査を行っておりません。患者様の症状を診断の上、内視鏡検査が必要と判断した場合には、専門医院をご紹介させていただきます。
当院は積極的な病院診・診診連携を行っており、精密検査のもと必要な処置が行えるように努めております。