症状が改善しても喘息治療を続ける理由とは?呼吸器専門医が解説|谷尻医院

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「最近、咳が止まらない…」それ、気象病や風邪がきっかけの喘息かもしれません。呼吸器専門医が伝える「喘息治療継続」の大切さ|神戸市東灘区・御影の谷尻医院

こんにちは。神戸市東灘区、阪神御影駅から徒歩1分の場所にあります「谷尻医院」です。当院は昭和23年の開院以来、70年以上の長きにわたり、3代にわたって地域の皆さまの健康をサポートしてまいりました。現在は、呼吸器専門医と総合内科専門医の双方の資格を併せ持つ医師が2名在籍しており、風邪のような身近な体調不良から、喘息、睡眠時無呼吸症候群(SAS)といった専門的な呼吸器疾患まで、幅広く診療を行っています。

最近、台風の接近や梅雨前線の停滞などによって気圧が変動する日が多く、それに伴って以下のようなお悩みでご来院される患者様が増えています。

  • 風邪をひいた後に咳だけがどうしても止まらない
  • 胸が苦しくて眠れない

なかには「一度は症状が治まったから、自分の判断で喘息のお薬を止めていた」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、実は喘息において「症状がない=病気が治った」というわけではないことをご存知でしょうか。今回は、呼吸器の専門医の立場から、喘息の病態と、なぜ症状が落ち着いた後も治療を根気強く続ける必要があるのかについて、詳しく解説いたします。

吸入ステロイド薬で喘息の症状を沈めて呼吸が楽になった女性のイラスト

1. 喘息(気管支喘息)とはどんな病気か
~空気の通り道で続く慢性の炎症~

喘息(気管支喘息)と聞くと、激しく咳き込んだり息が苦しくなったりする「発作」をイメージされる方が多いかと思います。しかし、それらの激しい症状はあくまで表面に現れた結果にすぎず、病気の本質は一言で言えば「気道の慢性的な炎症」です。

気道とは、空気の通り道のことです。喘息を患っている方の気道は、常に内側の粘膜が赤く腫れ、まるで皮膚にやけどをしたときのような状態が続いています。この目に見えない「慢性の気道炎症」があるために、健康な人に比べて空気の通り道が非常に敏感でデリケートになってしまい、日常生活のほんのわずかな刺激に対しても過剰に反応してしまうのが、この病気の基本的な仕組みです。

2. 激しい咳や「ゼーゼー・ヒューヒュー」が起こる、
発作時の気道の状態

喘息の代表的な症状には、突然始まる激しい咳や、息を吐いたときに胸の奥から「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする喘鳴(ぜんめい)があります。また、胸が締め付けられるような激しい息苦しさや、どんよりとした胸の圧迫感を覚えることも少なくありません。これらの症状は、日中よりも特に夜間から明け方にかけての時間帯に出現しやすいという大きな特徴があります。

こうした発作が起きているとき、敏感になっている気道の内部では大きな変化が起きています。慢性的な炎症によってただでさえ狭くなっている気道の粘膜がさらに激しく腫れ上がり、体を守ろうとして分泌物である「痰(たん)」が大量に増えてしまいます。それに加えて、気道の周りを取り囲んでいる筋肉がキュッと一気に収縮してしまうため、空気の通り道が極端に狭くなり、まるで細いストローで息をしているかのような苦しさを生じさせてしまうのです。

3. なぜ台風や急激な気圧変化で
喘息が悪化してしまうのか?

喘息を抱える方にとって、梅雨の長雨や台風の接近といった時期も、体調を崩しやすい警戒すべき時期となります。喘息の方の気道は、普段症状がなくて落ち着いているように見えるときでも、いわば「ボヤ(軽い火事)」が起こっているような不安定な状態にあります。そのため、外部からの環境の変化という刺激に対して非常に脆くなっています。

気圧の急激な変化も気道の状態に影響を与えます。天気が崩れて低気圧が近づくと、私たちの体調をコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすくなります。この自律神経の乱れが引き金となり、過敏になっている気道の筋肉を緊張させて収縮させたり、粘膜のむくみを悪化させたりして、喘息の発作を誘発しやすくしてしまうのです。これが、いわゆる「気象病」とも深く関係している喘息悪化のメカニズムです。

4. 風邪やエアコンの冷気など
日常生活に潜むさまざまな悪化要因

喘息の症状を悪化させる要因は、気圧の変化だけではありません。冷たいエアコンの風を急に吸い込んだときや、季節の変わり目の激しい寒暖差、タバコの煙、室内のダニやハウスダストといったアレルゲン、さらには日々の精神的なストレスや過労など、私たちの日常生活のいたるところに潜んでいます。

最大の悪化要因となるのが「風邪」などのウイルス感染です。風邪をひくと、ウイルスの影響でのどや気管支の粘膜に新たな強い炎症が加わります。もともと慢性的な炎症によって傷つきやすくなっていた気道に、風邪による炎症が追い打ちをかけるように重なるため、くすぶっていた小さな火種が一気に燃え広がり、夜も眠れないほどの「大火事(激しい発作)」へと繋がってしまうのです。そのため、風邪の引き始めにはいつも以上の迅速なケアが必要となります。

5. ゼーゼー音がしなくても油断できない
「咳喘息」と「気管支喘息」の違い

「風邪は治ったはずなのに、ゼーゼーした音は出ないけれど、咳だけが何週間も長引いて止まらない」という症状でお悩みの方は多くいらっしゃいます。このような場合、一般的な気管支喘息の手前の段階である「咳喘息(せきぜんそく)」の可能性を考える必要があります。

咳喘息とは、喘息特有のゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸の音(喘鳴)や、激しい呼吸困難を伴わないのが特徴で、コンコンとした乾いた咳だけが唯一の症状として長く続く病態です。市販の風邪薬や一般的な咳止め薬を飲んでも効果が現れず、夜間や寝入りばな、冷たい空気に触れたとき、長話、笑った際などに咳がひどくなる傾向があります。「音がしないから喘息ではないだろう」と自己判断で放置されがちな点が、この病気の隠れた盲点と言えます。

咳喘息をそのままにしておくと
本格的な喘息に移行してしまうリスク

咳喘息と気管支喘息は、一見すると症状の重さが違う別々の病気のように思えるかもしれませんが、実は「空気の通り道に慢性的な炎症がある」という根本原因はまったく同じです。いわば、咳喘息は本格的な気管支喘息の「予備軍」のような位置づけにあります。

そのため、咳だけだからと見過ごして適切な治療を行わずに放置してしまうと、気道の過敏性がさらに進んでしまいます。統計的には、大人の咳喘息患者様の約30%~40%が、やがて呼吸困難や喘鳴を伴う本格的な気管支喘息へと移行してしまうことが分かっています。まだ症状が咳だけにとどまっている早期の段階で呼吸器の専門医を受診し、正しく炎症を抑える治療をスタートさせることが、将来の重症化を防ぐために極めて重要な意味を持ちます。

6. 症状が消えても治療をやめてはいけない
最大の理由「リモデリング」の怖さ

喘息の治療を進めていく上で、私たちが最も強くお伝えしたい最大の落とし穴が、「咳や息苦しさが消えたから、もうすっかり治ったと思い込んで治療をやめてしまうこと」です。お薬の優れた効果によって表面上の症状がすっきりとなくなると、通院を中断したくなるお気持ちはとてもよく分かります。しかし、ここでお薬をやめてしまうと、体の奥底では非常に危険な変化が進行してしまうおそれがあります。

症状がなくなって一見健康そうに見えても、気道の内部ではまだ慢性的な炎症の火種が消えずに残っています。この状態のまま適切な治療をせずに炎症を放置し続けると、気道は何度も傷つけられ、その傷を修復しようとするプロセスの中で、徐々に気道の壁が厚く硬くなり、周囲の筋肉も肥大してしまいます。この気道が構造ごと変形して元に戻らなくなる現象を、医学用語で「リモデリング」と呼びます。

一度リモデリングが起きてしまった気道は、元のしなやかで広がった状態の気道には戻りにくくなってしまいます。そして徐々に空気の通り道が狭くなったままで固まってしまい、お薬が効きにくい「難治性喘息」へと進行してしまいます。症状がない時期に治療を続けるのは、目先の苦しさを取るためではなく、この恐ろしいリモデリングを防ぐために他ならないのです。

7. 吸入ステロイド薬が果たす役割は
「毎日の火の用心」と同じです

では、リモデリングを防ぎ、喘息を根本からコントロールするために何が必要かというと、現在の喘息治療の主軸である「吸入ステロイド薬」を毎日正しく続けることです。ステロイドと聞くと副作用を心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、吸入薬は非常に少量の薬剤を直接気道だけに届けるため、飲み薬のような全身への副作用の心配がほとんどなく、安全性が高いことが大きなメリットです。

この吸入ステロイド薬の役割は、例えるなら「毎日の火の用心」や「ボヤの段階で火を消し止める作業」と同じです。発作が起きたときに使う気管支拡張薬が、一時的に狭い道を広げる「応急処置」であるのに対し、吸入ステロイド薬は、気道の奥底で燃え続けている慢性的な炎症という「火事の根本原因」を優しく、そして確実に鎮めていくためのものです。

症状が全くない平穏な時期にこそ、この火の用心のお薬を毎日コツコツと使い続けることが重要です。継続治療により、気道の粘膜が少しずつ健康な状態を取り戻し、天候の変化や風邪のウイルスといった刺激を受けてもビクともしない、強い気道を作ることができるのです。

喘息の症状を解説しているチャート

8. 呼気NO検査などの専門的なアプローチで
一人ひとりに合った治療を

喘息は、専門医の指導のもとで適切にコントロールを行っていけば、健康な人と何ら変わらない健やかで快適な日常生活を送ることができる病気です。「夜中に咳が出て目が覚める」「風邪の後からもう何週間も咳が続いている」といった症状は、デリケートな気道が悲鳴を上げている、体からの大切なSOSサインかもしれません。

当院では、患者様が本当に喘息であるのか、また気道の炎症がどれくらい進行しているのかを客観的に見極めるため、「呼気NO検査(吐いた息の中の一酸化窒素の濃度を測定する検査)」などの専門的な呼吸器検査を導入しております。この検査は、機械に向かって数秒間優しく息を吹き込むだけですので、小さなお子様からご高齢の患者様まで、体に負担をかけることなく安心して受けていただくことができます。

検査結果をもとに、お一人おひとりの現在の病態やライフスタイルに合わせた、最も無理のない最適な治療プランをご提案いたします。

呼気NO(FeNO)検査の様子を表すイラスト

御影の街で皆様の健やかな呼吸を
守り続けるために

呼吸が苦しい、咳が止まらないという状態は、想像する以上に心と体に大きな負担と不安を与えるものです。私たちは、患者様が心の底からホッと安心し、毎日を笑顔で過ごしていただけるよう、常に丁寧で分かりやすい説明と、温かみのある医療を何よりも大切にしています。

昭和の時代から3代にわたり、ここ東灘区の御影駅前で培ってきた地域密着の経験と、2名の専門医による確かな知識を結集し、これからも地域の皆様の「心地よい呼吸」を全力で守り続けてまいります。

天候の不安定な季節、少しでも胸の違和感や長引く咳にお悩みがございましたら、どうぞいつでもお気軽に当院までご相談ください。

喘息の悩みから解放され生き生きと生活を送る女性のイラスト

執筆者情報

谷尻医院 院長:谷尻 力

(日本呼吸器学会 呼吸器専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本アレルギー学会 アレルギー専門医

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谷尻医院(呼吸器内科・総合内科・喘息外来)

住所
兵庫県神戸市東灘区御影本町4-10-6(阪神御影駅から徒歩1分)
電話
078-851-3439
専門資格
日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会 総合内科専門医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医 在籍
対応診療
長引く咳、咳喘息、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病など