高血圧と睡眠の意外な関係|神戸市東灘区・御影の呼吸器専門医が解説
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【連載:高血圧と向き合う 第1回】なぜ血圧が高いと怖いの?「サイレントキラー」の正体と日本人の現状

こんにちは。神戸市東灘区、阪神御影駅から徒歩1分の場所にあります「谷尻医院」です。当院は昭和23年の開院以来、70年以上の長きにわたり、3代にわたって地域の皆さまの健康をサポートしてまいりました。現在は、総合内科専門医と呼吸器専門医というふたつの専門医資格を併せ持つ医師が2名在籍しております。私、院長の谷尻力(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)をはじめ、医師・スタッフ一同が、風邪などの身近な病気から高血圧などの生活習慣病まで、お一人おひとりの全身の健康に寄り添った、温かく丁寧な医療を大切にしています。
さて、日々の診察室の中で、「健康診断で血圧が高いって指摘されたんだけど、どこも痛くないし、すごく元気でどこも悪い感じがしないし、このまま放っておいても大丈夫ですよね?」といったご相談をいただくことが本当にたくさんあります。
毎日元気に過ごせているのに、数字だけを見て「病気です」と言われても、なかなかピンときませんよね。そのお気持ちはとてもよく分かります。しかし、実はこの「どこも痛くない」「症状が何もない」ということこそが、高血圧の最も気をつけなければいけない、そして恐ろしいポイントなのです。
そこで今回から、皆さまに高血圧のことを正しく知っていただき、安心して毎日の生活を送っていただけるよう、全6回の連載ブログをスタートすることにいたしました。第1回目となる今回は、高血圧がなぜ「サイレントキラー」と呼ばれるのか、その本当の理由と、私たち日本人が置かれている血圧の現状について、分かりやすく丁寧にお話ししていきたいと思います。
高血圧は音もなく忍び寄る「サイレントキラー」
高血圧という言葉は普段から耳にする機会が多いと思いますが、医学の世界ではよく「サイレントキラー(静かなる殺人者)」という少し怖い名前で呼ばれることがあります。なぜそのように呼ばれるのでしょうか。
それは、血圧がかなり高い状態であっても、私たちの体にはほとんど自覚症状が現れないからです。頭が痛くなったり、胸が苦しくなったりといった「体からの分かりやすいサイン」がないまま、何年、何十年という長い時間をかけて、血管に強い圧力がかかり続けます。
例えるなら、古くなった水道のホースに、毎日強い勢いで水を流し続けているような状態です。ホースの内側は少しずつ傷つき、もろくなっていきますが、外側から見ているだけではその傷みには気づけません。これと同じことが、私たちの体の中にある大切な血管でも起きているのです。
症状が全くないから大丈夫、と放置している間に、心臓や脳、腎臓といった体の大切な臓器をつなぐ血管がじわじわとむしばまれていきます。そしてある日突然、なんの前触れもなく大きな病気が引き起こされ、命に関わる事態になったり、その後の生活に重大な後遺症を残したりすることがあります。だからこそ、体に異変を感じないうちに対策を始めることが何よりも大切なのです。

一瞬で日常を変えてしまう脳への影響と認知症のリスク
では、高い血圧をそのまま放置してしまうと、具体的に私たちの体の中でどのような病気が起こるのでしょうか。まずは、命やその後のQOL(人生の質)に直結する、脳への影響について詳しく見ていきましょう。
高い血圧によって脳の細い血管に負担がかかり続けると、あるとき血管が詰まってしまう「脳梗塞」や、圧力に耐えきれなくなった血管が破れてしまう「脳出血」などの脳卒中を引き起こします。脳卒中は、一瞬にしてこれまでの日常を一変させてしまうほど恐ろしい病気です。
さらに、それだけではありません。最近の研究では、まだ若い中年期の頃からの血圧管理を怠ると、将来的に「血管性認知症」などの認知症を発症するリスクが上昇するのではないかとも言われてきております。脳の健康な働きを保ち、自分らしい暮らしを長く続けるためにも、血圧の管理は欠かせない要素なのです。
働き続ける心臓にかかる大きな負担と不整脈
次に、私たちの体の中で24時間休みなく働き続けている、心臓への影響です。
血圧が高いということは、心臓からつながっている血管の圧が高いという事で、心臓が全身に血液を送り出す際により強い力が必要になるということです。常に全力で頑張り続けなければならないため、心臓の筋肉はだんだんと分厚くなり、疲弊していきます。これが進行すると、心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送り出せなくなる「心不全」という状態に陥ります。息切れがしやすくなったり、足がひどくむくんだりして、日常生活が大きく制限されてしまいます。
また、心臓自身に酸素や栄養を運ぶ血管が動脈硬化で狭くなる「心筋梗塞」や「狭心症」だけでなく、心臓に負担がかかることで脈が乱れる「不整脈(特に脳梗塞の引き金となる心房細動など)」の原因にもなるのです。日本では、年間でなんと約17万人もの方が、高血圧が原因となるこれらの病気で亡くなっていると推計されているほど、身近で深刻な問題です。
沈黙の臓器と呼ばれる腎臓を守るために
高血圧がもたらす影響は、脳や心臓だけにとどまりません。あまり知られていないかもしれませんが、実は腎臓とも非常に深い関係があります。
腎臓は体の中の余分な水分や老廃物を尿として外に出す、いわば「濾過器」のような役割を果たしています。この腎臓の中には、非常に細い血管が網の目のように張り巡らされています。そのため、高い血圧によってこの繊細な血管が傷つくと、濾過機能が落ちてしまう「慢性腎臓病(CKD)」を引き起こします。
腎臓もかなり悪くなるまで症状が出にくい「沈黙の臓器」です。機能が著しく低下して腎不全に陥ると、最終的には機械を使って血液をきれいにする「血液透析」が必要になり、日常生活が大きく制限されることになります。毎日の生活の質を保つためにも、腎臓の血管を高い血圧から守ってあげることがとても重要なのです。
日本における高血圧の現状は4,300万人の「国民病」
このように多くの深刻な病気の原因となる高血圧ですが、実は私たちの住む日本において、決して他人事ではない非常に身近な問題となっています。
現在、日本国内には約4,300万人もの高血圧患者さんがいると推定されています。これは日本の人口を考えると、成人の約3人に1人が高血圧という、まさに「国民病」とも言える状況です。しかし、これほど多くの患者さんがいるにもかかわらず、医師から見て安心できるレベルにまで血圧を良好にコントロールできている方は、全体のわずか27%(約1,200万人)に過ぎないと言われています。
特に大きな問題となっているのは、高血圧患者さん全体の約33%、人数にするとなんと約1,400万人もの方が、「自分自身の血圧が高い」ということ自体を認識していない、あるいは気づいていても治療を受けずに過ごしているという現状です。まさに自覚症状がないために、健康診断の結果を見落としてしまったり、「どこも悪くないから大丈夫だろう」と受診を先延ばしにしたりしている方がこれほど多くいらっしゃるのです。

日本人の食生活に深く関わる「塩分の摂りすぎ」
では、なぜこれほどまでに日本人に高血圧の方が多いのでしょうか。そこには、私たちの食生活や体格の変化が大きく関わっています。その大きな原因の筆頭に挙げられるのが「塩分の摂りすぎ」です。
日本の伝統的な和食は健康的である一方で、お味噌汁や漬物、あるいは醤油や味噌といった調味料を多く使うため、どうしても塩分が多くなりやすい特徴があります。実際に、日本人の1日の平均食塩摂取量は約10gと、世界的な基準から見てもかなり高い水準にあります。
さらに、日本人をはじめとする東アジアの人は、体質的に塩分の影響を受けやすく、体内に塩分をため込みやすい(塩分感受性が高い)傾向があることが分かっています。そのため、高血圧の方や血圧が高めと言われた方は、まずは1日6g未満を目標にすることが強く勧められます。
現代社会の忙しさの中で増加する「肥満」とのつながり
塩分の摂りすぎに加えて、近年特に問題となっているのが「肥満の増加」です。
近年、特に働く世代の男性において、運動不足や食生活の欧米化、不規則な食事などが原因で、BMIが25以上の肥満を伴う高血圧患者さんが増加傾向にあります。肥満になると、全身に血液を送るために心臓がより強く働かなければならず、結果として血圧が上がってしまいます。
肥満は高血圧の発症リスクを2〜3倍に高める要因となるため、昔ながらの塩分の問題と、現代的な肥満の問題が合わさることで、日本人の血圧を押し上げる大きな原因となっているのです。

結びに:将来の自分と家族を守るための「優しい投資」を
高血圧は自覚症状がないからこそ、早い段階で自分の体の状態に「気づき」、適切な管理を始めることが何よりも重要です。
大きな病気が突然発症してしまってから「あのとき、もっと早く血圧に気をつけていればよかった」と後悔するよりも、今、毎日の血圧に少しだけ関心を持つこと。それこそが、数年後、数十年後のあなた自身、そしてあなたを大切に想うご家族の笑顔の将来を守るための、最も価値のある「優しい投資」になります。
「健康診断の数値が高かった」「親も高血圧だし自分も心配だな」という方は、どうか一人で悩まずに、ぜひ一度、阪神御影の当院へお気軽にご相談ください。当院では、専門医・かかりつけ医の視点から、お一人おひとりの生活スタイルやお気持ちに寄り添い、無理のない最適なサポートをいたします。
次回は、「その数値は本当に高血圧?高血圧の基準値と『白衣高血圧・仮面高血圧』の正体」について詳しくお話しします。どうぞお楽しみに。
【谷尻医院(総合内科・生活習慣病外来・呼吸器内科)】
