【連載:高血圧と向き合う 第2回】その数値、本当に「高血圧」?高血圧の基準値と「白衣高血圧・仮面高血圧」の正体
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【連載:高血圧と向き合う 第3回】正しい血圧測定の極意:「測るタイミング」と「私に合う血圧計」の選び方

こんにちは。神戸市東灘区、阪神御影駅から歩いて1分の場所にあります「谷尻医院」です。当院は昭和23年にここ御影の地で開院して以来、3代にわたり70年以上の長きにわたって、地域の皆さまの健康をすぐそばで見守り続けてまいりました。
現在は、総合内科専門医と呼吸器専門医というふたつの専門医資格を併せ持つ医師が2名在籍しております。私、院長の谷尻力(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)をはじめ、医師やスタッフ全員が、患者さまのお気持ちに寄り添った優しく丁寧な診療を心がけています。風邪やアレルギーといった身近なお悩みから、高血圧などの生活習慣病、そして専門的な呼吸器疾患まで、お体全体の健康を総合的にサポートできるのが当院の特徴です。
前回の第2回目では、高血圧の基準値の違いや、環境によって数字が変わる「白衣高血圧」と「仮面高血圧」のリスクについてお話しいたしました。お家での血圧測定が、隠れた病気のリスクを見逃さないためにどれほど重要か、お分かりいただけたかと思います。
今回は、診察室で患者さまから特に多くご相談をいただく「血圧計はどれを選べばいいの?」「いつ測るのが正解なの?」という具体的な疑問にお答えしていきます。実は、ご家庭での血圧測定にはいくつかの大切なポイントがあります。最新の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」に基づきながら、正しい家庭血圧の測定方法について、分かりやすくお話ししていきたいと思います。
なぜ「腕に巻くタイプ」の血圧計が強く推奨されるのか
家電量販店や薬局の健康器具コーナーに行くと、たくさんの血圧計が並んでいますよね。最近では手首に巻くだけで簡単に測れるコンパクトなタイプも人気があり、手軽そうで魅力的に見えるかもしれません。しかし、私たち医師が皆さまの診断や治療の根拠としておすすめし、医療ガイドラインでも推奨されているのは、「上腕式(二の腕に帯を巻くタイプ)」の血圧計です。これには主にふたつの大きな理由があります。
ひとつ目の理由は、測定の正確性です。血圧を正確に測るための大切な大原則として、「血圧を測る位置(帯を巻く位置)を、心臓と同じ高さに合わせる」というルールがあります。上腕式の場合、二の腕に帯を巻いて椅子に座ると、意識しなくてもその位置が自然と心臓の高さに近くなります。そのため、余計なズレが生じにくく、測定される数値がとても安定するのです。
ふたつ目の理由は、手首式が持つ構造上の弱点にあります。手首で測るタイプは、測定しているときの手の位置(胸の前に持ってくるのか、机に置くのかなど)によって、心臓との高さが簡単にズレてしまいます。このわずかな高さのズレだけでも、血圧の数値には数mmHgから十数mmHgもの誤差が生じてしまうことがあるのです。さらに、手首の動脈は、骨や腱などに囲まれているため、帯で動脈を均等に圧迫することが難しいという解剖学的特性もあります。そのため、測定された血圧が不正確になってしまうことが多くなるのです。

ご自宅で毎日測り、ご自身の健康管理のメインとなる大切な1台を選ぶのであれば、上腕式の血圧計を選んでいただくのが正確な血圧測定の実現の第一歩となります。
腕の太さに合わせた「帯(カフ)」選びが大切な理由
診察室で血圧のお話をしていると、「実は先生、私は少し腕が太くて、普通の血圧計だとマジックテープの帯が途中でバリバリと外れてしまうんです。これでも無理やり手で押さえつけて測ればよいですか?」といったご相談を受けることがあります。
このお悩みは、血圧を正しく知る上で非常に重要なポイントです。実は、血圧計の帯(カフ)のサイズがご自身の腕の太さに合っていないと、それだけで数値がデタラメになってしまうことがあるのです。
例えば、腕が太い方が標準サイズの狭い帯を無理やり巻きつけて測ろうとすると、血管をしっかり圧迫するために、通常よりも余計に強い圧力が必要になってしまいます。その結果、実際の血圧はそれほど高くないのに、画面に表示される数字が本来よりも高く出てしまう現象が起こります。逆に、とても腕が細い方がブカブカの標準サイズの帯を使っていると、今度は軽い圧力でも簡単に血管が圧迫されてしまうため、血圧の数字が本来よりも低めに表示されてしまうのです。

血圧測定の精度を維持するには、ご自身の二の腕の周りの長さにぴったり合った帯を選ぶ必要があります。目安として、二の腕の周りの長さが34㎝以上ある方の場合は、一般的な血圧計に付属している標準の帯では対応できません。その場合は、別売りされている「成人用太腕用腕帯」という大きめの帯が使用できる機種を選んでいただく必要があります。逆に、腕周りが27㎝未満の小柄な方や、標準の帯を巻いたときにマジックテープが余りすぎてブカブカに感じられる方の場合は、「小児用・細腕用腕帯」という細めの帯を検討しましょう。ご自身に合う正しいサイズで測ることこそが、正しい血圧測定のためには重要になります。
血圧は一日のうちで「いつ」測るのがベストタイミングか
正しい血圧計と帯が準備できたら、次に気になるのが「一日のうちでいつ測ればいいのか」というタイミングですよね。前回の第2回の記事でもお話ししたように、血圧は一日の中で変動しています。そのため、毎日バラバラの時間に測ってしまうと、数値が良いのか悪いのかの判断がつきません。毎日決まったタイミングで測定することが重要です。医療ガイドラインでは、具体的に「朝」と「晩」のふたつの時間帯で測ることが推奨されています。
まず朝のタイミングですが、「起床後1時間以内」「お布団から出てトイレ(排尿)を済ませた後」「血圧を下げるお薬を飲む前」「朝食を食べる前」に測るのがベストです。椅子に座って1〜2分ほどリラックスして、呼吸を整えてからスイッチを押しましょう。朝の血圧は、一日のうちで最も脳卒中などのリスクが高まる「早朝高血圧(モーニングサージ)」が隠れていないかを見極めるために、最も重要なデータとなります。
次に晩のタイミングですが、こちらは「就寝前」に測ります。朝と同じように、椅子に腰掛けて1〜2分安静にしてから測定してください。入浴の直後やお酒を飲んだ直後は、一時的に血圧が低く出すぎてしまうため、お風呂上がりや晩酌からは少し時間をあけ、お布団に入る前の落ち着いた状態で測るのがコツです。
このように「1日2回」の時間を揃えて測る意義は、一日のうちで血圧がどのように変化しているかという「日内変動」の波を正しく把握し、体に隠れたリスクを見逃さないことにあります。実際の診断の際にも、その時々の一回きりの数字ではなく、1週間(少なくとも5日間)の平均値を用いて、慎重に判断を行っていきます。
ちなみに、1回のタイミングで何回測ればいいのかというご質問もよくいただきます。原則としては、1機会に「2回」測定し、その2回の数値を平均したものをその時の血圧として記録することをお勧めします。もし時間がなくて1回しか測れなかったという場合は、その1回目の値をそのまま記録していただいて構いません。大切なのは、完璧を目指して途中で止めてしまうことよりも、できる範囲で日々血圧測定を続けていくことです。
ここで一つ、診察室でもよくお見かけする大切な注意点をお話しさせてください。低い値が出るまで4回も5回も測り直される方がおられますが、何度も測定し直してしまうと、血管が血圧計の帯(カフ)による圧迫に慣れてしまい、本来よりも不自然に低い数字が出てしまうことがあります。「高い数字を見るのが怖くて、つい良い数字が出るまで頑張ってしまう」というお気持ちは本当に本当によく分かります。しかし、これでは、正しい診断や治療の妨げになってしまいます。
また、血圧手帳に記録をつけるときは、一番低かった数値だけを選ぶのではなく、出た数値をありのままにすべて書き留めることが大切です。たとえその日の数字が少し高く出てしまっても、それはあなたの今の血管の状態を教えてくれている大切なデータなのです。私たちはそのありのままの、体の状態を知りたいと考えていますので、どうぞそのまま教えてください。
お家でリラックスして正しく測るための5つの約束
血圧計の準備とタイミングが分かったら、最後に測定するときの「お部屋の環境や姿勢」にも少しだけ気を配ってみましょう。ちょっとした緊張や環境の変化で血圧はすぐに10や20は上がってしまいます。正確な数値を導き出すために、以下のポイントを意識してみてください。
1つ目は、お部屋の室温です。
寒さを感じると、私たちの体は熱を逃がさないように血管をキュッと縮めるため、それだけで血圧が跳ね上がってしまいます。特に冬場などは、しっかりと暖房が効いた、静かで心地よい室温のお部屋で測るようにしてください。
2つ目は、座る姿勢です。
床に座るのではなく、背もたれ付きの椅子にゆったりと腰掛けます(背すじを無理にピンと伸ばしすぎる必要はありません)。このとき、足を組んでしまうと足の血管が圧迫されて血圧が上がってしまうため、両足の裏はしっかりと床につけてリラックスしてください。
3つ目は、事前の安静です。
バタバタと動き回った直後にすぐ測ってしまうと、当然ながら数値は高くなります。血圧計の前に座ったら、まずは目をつぶって深呼吸をするなど、1〜2分間は体を落ち着かせる時間を意識的に作りましょう。
4つ目は、測定中の会話禁止です。
「今日のご飯は何かな?」「今何時?」など、測定中におしゃべりをしてしまうと、言葉を交わすだけで血圧は上がってしまいます。測っている間は、静かにリラックスして過ごすようにしましょう。
5つ目は、直前の習慣の制限です。
測定する前の1時間以内は、タバコを吸うこと(喫煙)、お酒を飲むこと(飲酒)、そしてコーヒーや緑茶などのカフェインを摂取することは控えてください。これらは血管を刺激して一時的に血圧を大きく変動させてしまう原因になります。

結びに:皆さまがつけた日々の記録は「将来の健康」を守る宝物です
お家で毎日の血圧を正しく測り、それをノートや血圧手帳などに記録していくこと。これは一見、地味で少し面倒な作業に感じられるかもしれません。しかし、日々ご家庭でつけてくださるその血圧の記録こそが、私たち医師にとって、皆さまの本当の体の状態を正確に把握するための、何よりも価値のある大切な情報源となるのです。
医院の診察室で私たちが測る血圧は、あくまでその一瞬の値に過ぎません。ご自身に合った血圧計を使い、正しいタイミングと方法で測っていただいた日々の血圧の推移、変動を見ることで、「あ、この方は朝に血圧が上がりやすいんだな」「冬になって少し血管に負担がかかってきたな」「週明けには血圧が上がりやすい方なんだな」という、オーダーメイドの正確な診断と治療ができるようになります。この正しい測定の習慣を身につけることこそが、将来の脳卒中や心臓病を未然に防ぐ、最も確実な第一歩となるのです。
「自分の腕には本当に標準の帯でいいのかしら?」「今の私の測り方、どこか間違っていないかな」と少しでも不安に思われたときは、どうか一人で悩まないでくださいね。
そんなときは、ぜひ受診の際にご自宅でお使いの血圧計そのものや、普段記入していただいている血圧手帳をそのままお持ちください。当院では、皆さまの毎日のライフスタイルやお悩みに合わせて、お一人おひとりに寄り添ったきめ細かなアドバイスをさせていただきます。一緒に、無理のない健やかな習慣を作っていきましょう。
次回は、「目標値『130/80』は厳しすぎ?将来の体と脳を守るための基準」について、詳しくお話ししていきたいと思います。年齢とともに基準はどう変わるのかなど、気になるお話をお届けしますので、どうぞお楽しみに。
谷尻医院(総合内科・生活習慣病外来・呼吸器内科)
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