【連載:高血圧と向き合う 第1回】なぜ血圧が高いと怖いの?「サイレントキラー」の正体と日本人の現状
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【連載:高血圧と向き合う 第2回】その数値、本当に「高血圧」?高血圧の基準値と「白衣高血圧・仮面高血圧」の正体

こんにちは。神戸市東灘区、阪神御影駅から歩いて1分の場所にあります「谷尻医院」です。当院は昭和23年にここ御影の地で開院以来、3代にわたり70年以上の長きにわたって、地域にお住まいの皆さまの健康をすぐそばで見守り続けてまいりました。
現在は、総合内科専門医と呼吸器専門医というふたつの専門医資格を併せ持つ医師が2名在籍しております。私、院長の谷尻力(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)をはじめ、医師やスタッフ全員が、患者さまのお気持ちに寄り添った優しく丁寧な診療を心がけています。風邪やアレルギーといった身近なお悩みから、高血圧などの生活習慣病、そして専門的な呼吸器疾患まで、お体全体の健康を総合的にサポートできるのが当院の特徴です。
前回の第1回目では、高血圧がなぜ自覚症状のないまま体をむしばむ「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれているのか、その理由と日本人の現状についてお話しいたしました。記事を読んで「まずは血圧を測ってみようかな」と思ってくださった方がいらっしゃれば、とても嬉しく思います。
さて、実際に血圧を測り始めたり、健康診断の結果を見たりした患者さんから、診察室でこのようなご質問をいただくことがよくあります。
「病院の診察室で測るとすごく高い数値が出るのに、お家に帰ってリラックスして測ると普通なんです。これって大丈夫なんでしょうか? どちらの数値を信じればいいですか?」
病院にくると緊張して血圧が上がってしまうという方は、実はとてもたくさんいらっしゃいます。では、その数値は本当に「高血圧」として治療が必要なのでしょうか。今回は、知っておきたい血圧の基準値の違いや、環境によって数字が変わる「白衣高血圧」と「仮面高血圧」の正体、そして血圧が持つ様々な変動の波について、詳しく分かりやすくお話ししていきたいと思います。
1. 診察室とご家庭で異なる
「高血圧のふたつの基準値」
皆さまは、高血圧と診断される基準となる数値が、測る場所によってふたつに分かれていることをご存知でしょうか。血圧には、病院やクリニックなどの医療機関で測る「診察室血圧」と、ご自身でお持ちの血圧計を使ってお家で測る「家庭血圧」のふたつがあり、それぞれ基準となる数値が異なります。
まず、病院の診察室で測る場合の基準は、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と呼びます。
一方で、ご自宅で測る場合の基準はこれよりも5mmHg低く設定されており、上の血圧が135mmHg以上、または下の血圧が85mmHg以上の場合を高血圧としています。

なぜお家で測る場合の基準が低くなっているかというと、ご自宅というリラックスできる環境で測る血圧は、病院で測るよりも本来の安定した数値が出やすいからです。そのため、もし病院での数値とお家での数値のどちらを参考にするべきか迷った場合は、お家で測った「家庭血圧」による診断を優先することが、最新の医療ガイドラインでもしっかりと明記されています。ご家庭で普段から測っている血圧のデータは、病院で一時的に測る数値よりも、将来的な脳や心臓の病気のリスクを予測するのにも優れているのです。
2. お医者さんの前で緊張してしまう
「白衣高血圧」
このように測る場所によって数値が変わる代表的な現象のひとつが「白衣高血圧」です。これは文字通り、医師や看護師などの「白衣」を見ただけで、本人が気づかないうちに緊張してしまい、診察室での血圧だけが高くなってしまうけど、お家に帰って落ち着いて測ると、数値はまったく正常の範囲内に収まる状態をいいます。

診察室で高い数値が出ると驚いてしまうかもしれませんが、この白衣高血圧であると分かった場合、すぐに慌ててお薬による治療を始めなければいけないわけではありません。まずは一安心してくださいね。
ただし、だからといって完全に放っておいていいというわけでもないのが、少し難しいところです。白衣を着た相手に対して血圧が上がりやすいということは、それだけ日常生活の中でも、ストレスや緊張を感じたときに血圧が跳ね上がりやすい体質である可能性を示しています。実際に、白衣高血圧の方は、血圧がずっと正常な方に比べると、将来的に本当の高血圧に移行するリスクが数倍高いということが分かっています。そのため、お薬は飲まなくても、定期的にお家で血圧を測りながら、経過を観察していくことがとても大切になります。
3. 本当の姿が隠れてしまう
「仮面高血圧」
白衣高血圧とはちょうど真逆で、医師として私たちが特に注意深く見つけ出さなければならないのが「仮面高血圧」と呼ばれる状態です。
これは、病院の診察室で測るときには不思議と正常な数値(140/90mmHg未満)に収まっているのに、お家へ帰って測ったり、あるいは職場などの日常生活の中で測ったりすると、基準値を超えて高くなってしまう現象です。高血圧という本来の姿が、病院の中だけ「正常」という仮面をかぶったように隠れてしまうことから、このように名付けられました。

この仮面高血圧は、病院の検査だけでは見逃されてしまいやすいため、実は非常に危険な状態です。ご本人は「病院で正常だと言われたから大丈夫」と思い込んでしまい、高い血圧が何年もの間、治療されずに放置されてしまう原因になります。
実際にデータを見てみると、仮面高血圧の方は、病院でもお家でも血圧がしっかりと良好にコントロールされている方に比べて、将来的に脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる大きな病気を発症するリスクが、約3倍も高くなるということが報告されています。
4. 仮面高血圧の背景にある原因と
「睡眠時無呼吸症候群」との深い関係
では、なぜ病院以外で血圧が高くなってしまうのでしょうか。その原因には、日々の生活の中にある様々なストレスや習慣が深く関わっています。例えば、お仕事中のプレッシャーや人間関係のストレスにさらされている時間帯だけ血圧が高くなる「職場高血圧」や、タバコを吸う習慣による血管の収縮なども原因となります。そして、当院が専門とする呼吸器内科の分野において、無視できない大きな原因が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気です。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりを繰り返してしまう病気です。睡眠中に呼吸が止まると、体は一時的な酸欠状態に陥ります。すると、本来であれば脳も体も休んでいるはずの時間帯なのに、生命の危機を感じて自律神経を興奮させ、血圧を急激に押し上げてしまうのです。

夜間や早朝に血圧が高くなるタイプの仮面高血圧には、この睡眠の病気が隠れていることが非常によくあります。当院では、総合内科としての生活習慣病の視点と、呼吸器専門医としての睡眠の視点の両方からアプローチすることができますので、もし「大きないびきをかいていると家族に言われる」「日中に強い眠気がある」といったお心当たりがある方は、隠れた高血圧のリスクを突き止めるためにも、ぜひ一度お気軽にご相談いただきたいと考えています。
5. 一日のうちでも大きく波打つ
「血圧の日内変動」
ここまでは測る場所による違いをお話ししてきましたが、血圧というのは本来、一日24時間の中で変動しているものです。私たちの体は、朝起きてから活動を始めるときに、自然と血圧が上がる仕組みになっています。しかし、この朝の上がり方が通常よりも極端に激しく、起床時の血圧がドカンと跳ね上がってしまう現象があり、これを「モーニングサージ(早朝高血圧)」と呼びます。一日のうちで最も脳卒中や心不全、心筋梗塞などが起きやすいのが、実はこの「魔の時間帯」とも言える早朝です。朝一番の血圧が高いかどうかを知ることは、命を守る上で本当に重要な手がかりになります。
また、健康な人であれば、夜眠っている間は体を休ませるために、血圧も昼間よりも10%から20%ほど自然と下がるようになっています。しかし、先ほどお話しした睡眠時無呼吸症候群の方や、ストレスが多い方、腎臓の働きが弱まっている方などは、夜間になっても血圧が十分に下がらない、あるいは逆に夜間に血圧が上がってしまうという特徴が見られます。こうした夜間の血圧の異常も、心臓や血管に大きな負担をかけ続けるため、見逃してはならない大切なサインなのです。

6. 季節の移り変わりが血圧に与える
「季節変動」
さらに、血圧の波は一日の間だけでなく、1年という季節の移り変わりのなかでも大きく変化します。これを血圧の「季節変動」といいます。
血圧は気温の影響を非常に強く受ける性質を持っています。一般的に、温かい夏場は全身の血管が広がり、汗をかいて体の中の水分も調整されるため、血圧は低くなる傾向があります。一方で、寒さが厳しくなる冬場は、体から熱が逃げないようにするために血管がキュッと細く収縮します。そのため、冬は夏に比べて血圧が高くなりやすいのです。
特に、暖かいお部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動したときなど、急激な温度の変化によって血圧が激しく乱高下する「ヒートショック」には注意が必要です。このように、血圧は季節によっても変化するために、冬になったからといって慌てるのではなく、季節に応じた適切な管理や、主治医と相談しながらお薬の量を調整していくことが大切になります。
7. 自分の血圧の「クセ」を知ることから
始めましょう
「病院で一度測った数値だけでは、本当の血圧の姿は見えてこない」ということが、少しお分かりいただけましたでしょうか。
お一人おひとりの体質やライフスタイルによって、血圧の上がりやすい時間帯や、緊張による影響の受け方は全く異なります。ご自身の血圧がどのような「クセ」を持っているのかを正しく知り、本当の高血圧リスクを見逃さないようにするためには、やはり毎日のご家庭での血圧測定が何よりも欠かせない第一歩となります。
「家で測ると毎日バラバラで、どう見たらいいのか分からない」「私の測り方、本当に合っているかしら」と不安に思われることもありますよね。そんなときは、ぜひその測定データが書かれた血圧手帳やメモを持って、阪神御影駅前の当院へお気軽にお越しください。
当院では、総合内科と呼吸器内科の両方の専門的な視点、かかりつけ医としての視点から、その数値が意味することをしっかりと読み解き、皆さまが毎日を安心して笑顔で過ごせるよう、温かくサポートさせていただきます。

次回は、「正しい血圧測定の極意:『測るタイミング』と『私に合う血圧計』の選び方」について、さらに具体的にお話ししていきたいと思います。腕が太くて帯が外れてしまうとお悩みだった方へのアドバイスも詳しくご紹介しますので、どうぞお楽しみに。
谷尻医院(総合内科・生活習慣病外来・呼吸器内科)
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