【連載:高血圧と向き合う 第2回】その数値、本当に「高血圧」?高血圧の基準値と「白衣高血圧・仮面高血圧」の正体
ブログ
【連載:尿酸と向き合う 第1回】尿酸が高いと言われたら?〜「痛くないから」と放置できない正体とリスク〜

こんにちは。神戸市東灘区、阪神御影駅から徒歩1分の場所にあります谷尻医院です。当院は昭和23年の開院以来、3代70年以上にわたって地域の皆さまの健康に寄り添ってまいりました。現在は、総合内科専門医と呼吸器専門医というふたつの専門医資格を併せ持つ医師が2名在籍しております。風邪などの身近な病気から、高血圧、高尿酸血症などの生活習慣病、専門的な呼吸器疾患まで、幅広く診療を行っています。お一人おひとりの全身の健康に寄り添った、温かく丁寧な医療を大切にしています。
さて、日々の診察室では、「健診で尿酸値が高いと言われたけれど、痛くも痒くもないから放置していた」、「痛風の発作を起こしたことはあるけれど、痛みが引いたからまた以前と同じようにお酒を飲んでいる」といったお声をよく伺います。
健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたり、ある日突然、足の親指などに激痛が走ったりすると本当に驚きますよね。しかし、痛みが治まったり、普段症状がなかったりすると、つい後回しにしてしまいがちなのが尿酸の困ったところです。
実は、尿酸値が高い状態は、単に「足が痛くなるかもしれない」というだけの問題ではありません。
今回は、今や身近な生活習慣病となった高尿酸血症と痛風の正体、そしてなぜ放置してはいけないのかについてお話しします。
1. 高尿酸血症や痛風は
1,000万人が抱える身近な病気です
かつて痛風といえば、贅沢な食生活を送る人がかかる「帝王病」などと呼ばれていました。しかし食生活が変化した現代では、誰にとっても非常に身近な病気となっています。
現在、日本国内の痛風患者さんは約125万人、そして痛風の一歩手前である「高尿酸血症」の患者さんは約1,000万人に上ると推定されています(厚生労働省の国民生活基礎調査などより)。血液中の尿酸値が7.0 mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されますが、実に多くの方がこの数値を超えているのが現状です。
ちなみに、痛風患者さんの95%以上は男性が占めています。これは、女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸を体外へ出しやすくする働きがあるためです。ただし、女性の方も閉経後は尿酸値が上昇しやすくなりますので、決して油断はできません。
2. 体質だけでなく
日々の「生活環境」が大きく影響します

尿酸とは、体内の細胞やエネルギーのもととなる「プリン体」が分解されたあとにできる、いわば老廃物のようなものです。
高尿酸血症には遺伝的な体質も関与しますが、それ以上に日々の生活習慣が大きく影響しています。例えば、ビールをはじめとするアルコール類、お肉や魚介類の内臓(レバーや白子など)といったプリン体を多く含む食品の摂り過ぎ、果糖や甘い飲み物の過剰摂取などが挙げられます。
また、肥満(BMI 25以上)も大きな原因の一つです。肥満になると体内で尿酸が作られやすくなる一方で、排泄されにくくなってしまうため、尿酸値を押し上げる大きな要因になってしまいます。
3. 痛くないからと放置すると
全身の血管や臓器に影響が及びます
高尿酸血症の本当の怖さは、激しい痛みを伴う痛風発作だけではありません。症状がない間も、目に見えないところで全身の血管や臓器に少しずつ負担をかけ続けている点にあります。
- 腎臓への負担(痛風腎):
尿酸の結晶が腎臓に溜まっていくと、じわじわと腎臓の機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)へと進行していくリスクが高まります。 - 尿路結石:
尿が酸性に傾くことで結石ができやすくなり、背中や下腹部に猛烈な痛みを引き起こすことがあります。 - 心臓や脳の疾患リスク:
高尿酸血症は高血圧を併発しやすく、動脈硬化を進めて心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気を引き起こす一因になることが指摘されています。
4. なぜ痛風発作は
「夜間や明け方」に起きやすいのでしょうか
痛風の発作を経験された方の多くが、「夜中や早朝に急に痛くなった」とおっしゃいます。これには明確な理由があります。
そもそも痛風の痛みは、ただ尿酸の結晶が存在しているだけで起こるわけではありません。関節の表面に溜まっていた結晶が、何らかのきっかけでペロッと「剥がれ落ちた」ときに起こります。剥がれ落ちて散らばった結晶を、体内の免疫細胞(白血球)が敵とみなして一斉に攻撃を開始することで、あの激しい炎症状(激痛)が引き起こされるのです。
そして、この「結晶が剥がれ落ちやすい環境」が揃ってしまうのが、まさに夜間から明け方にかけての時間帯なのです。

就寝中は汗をかくことで体内の水分が失われやすく、関節のなかの環境が急激に変化します。この水分の減少や夜間の体温低下によって関節のなかが不安定になると、固まっていた結晶の土台が揺らぎ、関節から剥がれ落ちやすくなってしまうのです。特に汗をかきやすい夏の時期は、脱水からこの剥離が起こり、発作につながる方が少なくありません。
また、当院の専門分野でもある「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を合併している場合、夜間の低酸素状態によって体内で尿酸が過剰に作られてしまい、発作のリスクをさらに高めてしまうことが分かっています。
5. 治療のゴールは
尿酸値を「6.0 mg/dL以下」に保つことです
体内に溜まってしまった尿酸の結晶をゆっくり溶かして排泄し、将来の痛風発作や重大な合併症を防ぐためには、尿酸値を6.0 mg/dL以下にコントロールし続けることが目標となります。
尿酸値をしっかり管理することは、将来のご自身の大切な腎臓や血管を守り、いつまでも健康で過ごすための大切なケアとなります。
当院では専門医が、尿酸値のコントロールはもちろんのこと、併発しやすい高血圧や睡眠時無呼吸症候群なども含めて、お一人おひとりの生活に合わせたトータルサポートを行っております。「健康診断の数値が少し気になっている」「痛みが引いたけれどどうすればいいか分からない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
次回は、「今日から実践!尿酸値を下げる『生活習慣改善』の3つの柱」と題して、日常でできる具体的な工夫について分かりやすく解説いたします。
谷尻医院(総合内科・生活習慣病外来・呼吸器内科)
関連記事
【連載:高血圧と向き合う 第2回】その数値、本当に「高血圧」?高血圧の基準値と「白衣高血圧・仮面高血圧」の正体
【連載:高血圧と向き合う 第6回】お薬との付き合い方:「一度飲み始めたら一生やめられない」の誤解
【連載:高血圧と向き合う 第4回】目標値「130/80」は厳しすぎ?将来の健康を守るための「基準」
【連載:高血圧と向き合う 第5回】薬に頼らず下げたい!自分でできる生活習慣改善の6つのポイント
【連載:高血圧と向き合う 第3回】正しい血圧測定の極意:「測るタイミング」と「私に合う血圧計」の選び方
